白田さんは、大学時代に能の魅力にはまり、多いときは
月1回は能楽堂に通っていたという。 まだ20代前半という若い人が能?と思う方もいるかもしれない。
参加者も、そこから質問しはじめた。
(右写真 手前中央が白田さん)
Q:白田さんは、なぜ、能を見始めたのですか?
最初は、三島由紀夫の「近代能楽集」を読んで、興味をもったんです。
大学一年の時、松岡心平先生(「能って何?」などの著作あり)の授業で能を観に行って、これは面白いと思ったんですよね。
Q:台詞とか、わかりました?
テキストよりも、ビジュアル(服飾、舞)と、音にはまったんですよね。
服の華やかさ、音階が西洋音楽と違うし、西洋的にいうと不協和音だけの世界に驚いたんですよね。 初めて観た日の夜に、どんどんと舞台の様子や音が頭から湧き出て止まらなくなった。後で聞くと、それは典型的な「はまる」形だそうです。
能には必ず「舞」があるのですが、能の基本は「踊り」だと思います。
よく祭りなどで、神様に捧げる 踊りがありますよね。そういう踊る本能から始まっていると思うのです。最初は「猿楽」という大道芸みたいなものから始まって
いるので、基本はエンタティンメントなんですよ。
テキストについては、はまってからは、当日の演目の台本を手元に用意 しながら観て、台詞 などで 気になったり、わからない時は、チェックする
ようにしています。 今日も用意しています。
Q:今日は寝不足なので、眠くならないか心配なのだけど・・・
僕も寝そうになる時、ありますよ。能の魅力の一つは「夢幻」にあります。
能の内容は、リアルな世界と夢の世界が一体となるものが多いので、
「あぁ、僕も半分夢、半分目覚めた世界にいたなぁ」
と思って、楽しんでます。
Q:能と言えば、面ですが、面はみんなかぶっているのですか?
能では面(おもて)を「かぶる」とは言わず、「かける」と言います。ちょうど壁にものをかけるように面をかけるからでしょうか。演目紹介にシテ、ワキ、ツレとありますが、主役のシテは基本的に面をかけ、ツレもかけることが多いです。
シテが面をかけずに出てくる能を直面(ひためん)の能と言います。
シテは、夢の世界の人、ワキは、現(うつつ)の世界の人なんですよ。現の人が夢の人に出会う、一緒にいるというのが、すごく面白いところで、好きなんですよ。 (ツレも、シテ方の人が演じます。)
それを思いっきり味わうために、僕はいつも、舞台の右横(脇正面)からみるんですよ。
Q:正面から観るものではないのですか?
普通は正面からですね。(笑)
能の舞台というは、図のような形をしていて、舞台から左に「橋掛り」という道があります。その先の出入口とあるところに、揚幕があり、その幕を通って、舞台に出入りします。
この橋掛りには、もう一つの意味があります。舞台の世界と「あちらの世界」「夢の世界」をつなぐ架け橋なのです。
演目によっては、橋掛りから舞台の世界に語りかけたりします。すると、あの席だと、まさに、夢と現の間で、舞台の世界に入り込んでいく感じがして、これがいいんですよね!
Q:今日の演目って多いんですね。しかも、全部で6時間近くあるとは・・・
能の演目は、番組の構成から、「神・男・女・狂・鬼」の5つに分類できる んですよ。
本来は五演目で一セットなんですよね。
- 神・一番目物:脇能物(神能)---神様が出てくる話や、めでたい話。
- 男・二番目物:修羅物---武士が死後、生前の戦いや、苦しみを語る。
- 女・三番目物:---女性をシテとし、舞が中心。
- 狂・四番目物:---生き別れた親子の再会などのドラマ
- 鬼・五番目物:切能---鬼のように異界の者が登場する。娯楽性が高い。
現代では、5つセットというのはめったにないので、観る前に演目がどれにあたるか、ガイドブックなどでチェックするのがお勧めです。
鬼がエンタテイメント性が高いので、初心者にはお勧めですね。
今日は、氷室=神、歌占=狂、杜若=狂、土蜘=鬼 だから、
順番違いますしね。 
Q:狂言というのは、演目に入らないんですか?
狂言は能舞台の合間に、軽いコメディのような舞台をするんです。
能は歌や台詞が古い言葉で決まっていますが、狂言はかなり自由で、その時々の言葉を使うんです。だから、野村萬斎さんのように、現代劇などに出たりする人が出てくるんですよね。
あと、能の舞台の中にも、狂言師は出てきます。
例えば、「氷室」の演者紹介に、「間(アイ)」というのがありますよね。
これは狂言師なんです。
神や鬼の舞台は、前半と後半でシテが着替えることが多いのですが、 その間に出てきて、前半のあらすじを紹介してくれるんです。
で、狂言は、その時々の言葉で話してもいい。 たぶん、江戸時代くらいの人も、言葉や台詞はよくわからなかったのでしょうね。
間は、単にあらすじというのでもなく、後半につながるポイントを話したり、笑いをとったり、また、サイドストーリー的な独自の話をすることもあります。
途中に出てきて、あらすじを話す・・・というのは、能独自ですね。
Q:「狂言まわし」という言葉は、 能からなんですね!
___狂言師は、主役のシテになる前の若手がやるのですか?
いや、能の演じ手は、シテ方、ワキ方、囃(はやし)方、狂言方という それぞれ別の職域(ギルドのようなもの)なんです。
狂言とシテは、実際に観るとわかりますが、発声の仕方や 姿勢も違います。単なる劇上の役割分担ではないんです。